「両親が無くなったので住んでいたマンションを相続することになったんだけど、相続税っていくらになるの・・・」
「相続税を払うお金がないから、売却してそのお金で税金を払いたい。でも、売る時に何を気を付ければいいのか分からない・・・」
不動産の相続に直面している人なら、こんな悩みを抱えているのではないでしょうか?
不動産の相続で大きな問題になるのが税金。ですが、相続税と売却時した際に発生する税金とは別物だという事を理解している人は少ないです。
そこで、今回は相続したマンションの気になる相続税から、マンションを売却した際に発生する相続税とは別に掛かる税金まで、分かりやすく纏めました。
【目次】
マンションの相続税評価額の計算式と節税ポイント
マンションにかかる相続税について理解する為には、2つの事を抑えておく必要があります。
一つ目は相続税評価額の計算方法です。相続税評価額の計算方法は突き詰めると複雑ですが、ポイントを抑えて概観を抑えておけば十分理解できます。
これによって、そもそもマンションを相続した際に、相続税が自分に掛かるのか掛からないのかを判断する事が出来るようになります。
2つ目は、もし相続税がかかる場合、相続税額を抑えるために利用できる2つの控除の存在を知っておくことです。
相続したマンションの評価額計算方法
相続したマンションの評価額ですが、「土地」と「建物」に分けて計算します。その際、土地ついては「路線価」を利用して計算し、建物は「固定資産税評価額」を用います。これは、日本の税法では「土地」と「建物」の評価基準と評価方法が違うためです。
まず、「建物」部分については自分で評価額を計算する必要はなく、固定資産税の「課税明細書」に記載されている評価額をチェックするだけで済みます。
自分で評価額の計算を行う必要があるのは、「土地」の部分です。土地の相続税評価額は、以下の計算式で求めることが出来ます。
【路線価】×【面積】=【土地の相続税評価額】
更にマンションの場合は、この数値に「持分割合」を掛けることになります。
【路線価】×【面積】×【持分割合】=【マンションにおける土地の相続税評価額】
一戸建てと違い、マンションはそこに住む沢山の人達が土地や建物をそれぞれの持分割合に応じて、みんなで所有しています。
その為、マンションの底地全体の評価額を計算した後に、自分の持分割合を掛けて最終的な土地の相続税評価額を算出する必要があるのです。
つまり、マンションの評価額の計算式は以下のようになります。
【建物の固定資産税評価額】+【土地:路線価×面積×持分割合】=【マンションの相続税評価額】
なぜ現金よりも不動産が相続税対策に有効なのか?
不動産での相続が、現金などの相続よりも相続税の節税対策として有効なのは、課税対象となる相続財産の評価額が引き下げられるからです。
先ほどから出てくる、「固定資産税評価額」や「路線価」といった言葉は普段聞きなれない為、ややアレルギー反応を示す人もいるかもしれません。ですが、計算式自体は非常に単純な物ですし、簡単に調べることが出来ます。
「固定資産税評価額」は、市町村から毎年送られてくる「課税明細書」に金額が書かれています。
「路線価」は、国税庁のHPに掲載されている「路線価図・評価倍率表」で調べることが出来ます。
「不動産の購入が相続税対策に有効だ」と言われるのは、この「路線価」と「固定資産税評価額」に理由があります。
というのも、「路線価」も「固定資産税評価額」のどちらも、実際の市場の売買価格よりも低いからです。一般的には、市場価格に対して「路線価」で70~80%、「固定資産税評価額」で60~70%の価格になると言われています。
つまり、資産を現金で相続するよりも、不動産で相続すれば市場価格よりも評価額が低いので、課税対象となる相続財産の評価額が引き下げられるので、相続税の節税になるのです。
なぜタワーマンション購入が相続税対策になるのか?
タワーマンションの購入が相続税対策に有効だと言われる理由も、評価額の計算方法を読み問いていくと理解できます。ここでも、相続税評価額を考える際に「敷地」と「建物」に分けて考えるのが基本です。
タワーマンションの購入が相続税対策になる理由は2つあります。
1つ目は建物が高ければ高いほど住民が増えるので、住民1人当たりの底地の評価額が小さくなるからです。これは先ほど紹介した「土地の評価額」の計算式を見ればすぐに分かります。
【路線価】×【面積】×【持分割合】=【マンションにおける土地の相続税評価額】
ポイントは「持分割合」です。マンションの住人が増えれば増える程、住民1人当たりの持分割合は小さくなっていきます。タワーマンションの場合、済んでいる住人が一般的なマンションよりも遥かに多いので、「持分割合」がより小さくなるのです。
その為、タワーマンションの1室当たりの土地の評価額は小さくなります。
2つ目は、マンションの建物部分の評価額そのものである「固定資産税評価額」は、広さが同じなら高層階でも低層階でも同じ評価が下されるからです。
先ほど、「固定資産税評価額」の価格が、マンションの建物部分の評価額になると説明しました。
実は「固定資産税評価額」は、部屋の面積の大きさによって決まります。その為、高層階の部屋と低層階の部屋を比較した場合、部屋の面積が同じ大きさなら固定資産税の評価額は同じになります。
ですが、市場の売買価格を見た場合、高層階の部屋の方が低層階の部屋よりも高値で取引されます。超高層のタワーマンションで高層階の居室を購入した場合、購入価格よりも遥かに低い「固定資産税評価額」なるということが起こることがあります。
つまりタワーマンションの場合、購入したフロアーが高層階であれば高層階であるほど、相続税の節税効果が大きくなります。
タワーマンション購入が相続税対策になる条件とは?
相続税対策としてタワーマンション購入を考えるなら、もちろん注意すべき点があります。それは、購入した部屋を居住目的で買ったと税務署に判断してもらえるかどうかです。
先ほど説明したように、高層階にあるタワーマンションの居室を購入すれば、実際の購入価格よりも固定資産税評価額が低くなるので、相続税額も少なくなります。その為、相続税対策でこのカラクリを利用したタワーマンションの高層階の購入が流行りました。
ですが、税務署もバカではありません。露骨な相続税対策目的でタワーマンションの高層階の部屋を購入した場合は、相続税を課税されてしまいます。後から相続税の課税をされてしまうと、延滞税を含めた徴収をされることになります。
すでに裁判で露骨な相続税対策の為のタワーマンション購入は認めないという判例も下されているので、居住目的での購入でないのならば大きなリスクを抱えることになります。あくまで居住目的で購入したタワーマンションが、結果として相続税対策にもなったと考えるのが大切でしょう。
【マンション相続税の控除①】基礎控除
相続税の節税対策で最初に考えるべき事は、「基礎控除」の利用です。
基礎控除は、相続財産の総額から決められた金額を控除する事で、相続税が掛からない、もしくは相続税が減額されるという制度です。もし、相続する財産が基礎控除の金額よりも少なければ、相続財産は全額控除されることになり、相続税が掛かりません。
気になる基礎控除の額ですが、以下の計算式で求める事ができます。
3,000万円+600万円×【相続人の数】=【基礎控除額】
例えば、相続人が4人だった場合の基礎控除額は以下になります。
3,000万円+600万円×4人=5,400万円
この例では、相続する遺産が1億円だった場合、1億円から5,400万円を引いた残りの4,600万円の部分にしか相続税は課税されません。
また、相続予定のマンションの評価額が5,000万円だった場合は、
【マンション評価額】5,000万円<【基礎控除額】5,400万円
となり、相続税が課税されなくなります。
ここでポイントとなるのが、「法定相続人の人数」です。そもそもの話として、法定相続人の数が間違っていると基礎控除の額が大きく変わります。
誰に相続する権利があるのか、法定相続人として認められる要件は法律で決まっています。法定相続人が誰なのかを確定させる際は、弁護士などの専門家を交えてしっかり確認する事をおすすめします。
【マンション相続税の控除②】配偶者の税額軽減
「自分が死んだ後も、大きな負担なく妻に今のマンションに安心して積み続けてもらいたい」
そう考えているのであれば、「配偶者の税額軽減」いわゆる「配偶者控除」を利用するのが良いでしょう。「配偶者の税額軽減制度」は財産を配偶者に単独相続させる場合に限り、相続税を無課税にできる制度です。
「配偶者の税額軽減」の具体的な制度の内容ですが、配偶者が実際に相続した金額と、法定相続分の金額もしくは1億6,0000万円と比較してそれらより少なければ非課税に出来るというものです。
①【実際に相続した財産】≦【1億6000万円>法定相続分の金額】
②【実際に相続した財産】≦【法定相続分の金額>1億6000万円】
つまり、実際に相続した財産が、上の2つのどちらかのケースに当てはまれば相続税は非課税になります。この「配偶者の税額軽減」制度を使えば、多くの場合で残された配偶者に掛かる相続税を非課税にすることができます。
相続したマンションの「売却時」に掛かる税金
ここまではマンションを「相続」する際に掛かる税金である相続税と、その節税ポイントについて解説してきました。
ここからは相続したマンションを「売却」する際に掛かる税金について具体的に説明します。
相続したマンションを売却する時に必ず掛かる税金・費用
相続したマンションを売却する際に必要になる税金と費用をまとめました。まず、マンションの売買契約が成立した時にかかる税金と費用が3つあります。
- 印紙税
- 登録免許税
- 仲介手数料とその消費税
印紙税は、売買契約を締結させる為に作成された契約書に貼りつける収入印紙です。不動産取引では必ず契約書を作成しますので、収入印紙を貼らなければなりません。
印紙税は取引される金額によって決まっています。
登録免許税は、登記を行う時に支払う税金になります。
不動産売買の取引では所有権移転登記や、抵当権が付いていれば抵当権抹消登記を行います。これらの登記は、必ず行います。
仲介手数料は、マンションの売却を不動産仲介会社に依頼した場合に発生する費用です。自分で買主を見つけてきた場合は必要ありません、買主を自分で見つけるあてが無い場合は仲介会社に依頼することになります。
売却益が発生した場合に発生する税金
先ほど説明した不動産の売却時に必ず掛かる印紙税や登録免許税、ほぼ必要になる仲介手数料の他にも、相続したマンションを売却した際に利益が出たら更に税金が掛かります。
所得税と住民税です。この二つを合わせて「譲渡所得税」と呼ばれます。
相続したマンションが一般の居住用の場合は控除の特例を受けられるケースがあります。「相続したマンション売却時の節税に使える特例と納付時期」をご参照ください。
これは最初のパートで説明した相続税とは別に収める必要のある税金なので、相続税とは分けて理解しておく必要があります。
所得税や住民税は「譲渡所得」を元に計算されます。
譲渡所得の計算式は
【売却価格】-【取得費】-【譲渡費用】=【譲渡所得】
で求めることが出来ます。
「取得費」とは、マンションの購入時に必要だった物件の購入価格、印紙代や登録免許税などの税金、仲介手数料、リフォーム代などです。
「譲渡費用」は取得費とは反対にマンションの売却時に掛かった印紙代や登録免許税、仲介手数料などです。
譲渡所得税の税率は、不動産の保有期間が5年を超えるかそれ以下なのかで変わります。
保有期間が5年を超える場合:「長期譲渡所得」と呼ばれ、所得税15%、住民税5%
保有期間5年以下の場合:「短期譲渡所得」と呼ばれ、税率が長期譲渡所得の約2 倍の所得税30%、住民税9%
保有期間の考え方ですが、今回のテーマである「相続したマンションの売却」のケースでは、相続した日から5年なのかどうかではなく、父母などの被相続人がマンションを購入した日からの保有期間で計算します。
相続したマンションを売却して譲渡所得が発生すれば所得税と住民税が発生しますが、譲渡所得がマイナスだった場合は非課税です。
相続したマンション売却時の節税に使える特例と納付時期
売却するマンションに相続前から被相続人と同居して場合、次の2つの特例を利用することで譲渡所得税の節税が出来る可能性があります。
- 3,000万円の特別控除
- マイホームを売ったときの軽減税率
3,000万円の特別控除は、譲渡所得から3,000万円を差し引ける特例です。もしこの特例が利用できれば、譲渡所得税を大きく減らすことができます。
ただし、この特例を受けるには相続が発生する前から対象なる不動産に住んでいて、相続した後も所有者として住んでいるという点が重点的に調べられます。
また、売却するマンションを保有していた期間が10年を超えていた場合、「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」を利用することができます。
この特例は先に紹介した「3,000万円の特別控除」と併用できるのがポイントです。もし2つの特例を併用する事が出来れば、更に大きな節税効果が期待できます。
相続したマンションを売却して、譲渡所得が発生した場合、所得税と住民税はマンションを売却した翌年の2月16日から3月15日の期間中に確定申告を行って納付します。
マンションの相続に関わる税金まとめ
今回はマンションの相続に関する税金について分かりやすく纏めました。様々な点を解説しましたが、今回抑えてもらいたいポイントは以下の3つです。
- 相続税と相続したマンション売却時に発生する税金は別
- 相続税の評価額の計算方法を理解する
- 相続税と譲渡所得税のそれぞれで使える節税の為の特例を理解する
不動産の相続と聞くと多くの人が不安になりますが、その不安の原因は相続そのものについて知識や経験がないことから来るものです。ここでは概要を分かりやすく簡潔に説明しました。
ですが、実際の相続の現場では予測不能な自体や想定外のケースに見舞われることも多々あります。その際、自分で何でも解決しようとするのはおすすめしません。
余計なトラブルや損をしない為に大切な事は、専門家の知識と経験を利用することです。特に相続不動産の売却の場合、「相続」と「不動産売却」という非日常の出来ごとを同時進行で進める必要があります。
分からないこと、出来ないことがあれば一人で悩まずに専門家に相談しましょう。
売却に強い不動産会社なら、相続したマンションの売却の経験は豊富なので、的確なアドバイスや専門家の紹介を受けることができます。
まずは、一括査定サイトを使って無料相談を受けてみることをおすすめします。

わが家では自宅マンションを700万高く売却するのに成功しました。以下のページでコツや売却ノウハウを公開しています。